思い起こせばあれは、ほんの3ヶ月ほど前のことでした。
全くいつものように、朝は目が覚めると、まずすぐに窓を開け換気。
続いてやかんを火にかけ、豆を惹き、コーヒーを入れ、ふーっと一息、キッチンで
ぼんやりタバコを燻らしている時に、それは訪れたのでした。

前日の晩はちょうど、私が高円寺に上京してきて、一番初めに居ついた店「Bar T町64」の閉店パーティー。
懐かしさと寂しさがあいまって、『今夜はあの8年前のように。。。』なんつて、久しぶりのテキーラをくいくいと
リズミカルに飲みすぎてしまったわけ。
一晩明けても、まだアルコールと、マスターの妙にすっきりした顔が頭に残り、なんとも不思議な白い朝だった。


ところで、私の職場で働くのは、基本的に皆女の子。
よく出る話題トップ3に入るのが月のもののお話。
軽いだの、重いだの、多いだの、少ないだの、痛いだの、苦しいだの、来たの、来ないの。
毎月そんな話になる。
超生理不順なわたしに、HPちゃんが言った。

HP「あれ?林さんまだ来ないんですか?」
林「そうなのよーでも、ま、いつもの事だから。」
HP「なんかその間に私が2回くらい来てる気がしますー」
林「そう?そんなことはないよ、気のせいじゃない?」
HP「わたし、家に妊娠検査薬がひとつあまってるんですが、使います?」
林「いらないよー絶対違うから、だってー最近に思い当たる節ないし!(笑)
  若いんだからさー、またすぐにム?ムム??なんて自分でHPちゃんが必要になる時くるわよー」←ほとんど部長のセクハラ

なんていいながら、そそくさと仕事の準備をしていたのでした。
一ヶ月やそこら生理が遅れるなんて、本当にいつものことなのに、HPちゃんの第六感か!?
彼女は次の日にちゃーんと例のそれを持ってきてくれたのでした。
HP「これ、使って下さい!」

不思議な白い朝の中、ふと、それの存在を思い出すわたし。
『半分テキーラかけるようなもんだけど、ま、やってみるか!?」

最近の妊娠検査薬って凄いんですね!
90数%の正確さで、妊娠がわかるんですって。
尿の水分がしみ込んでいく様が、例の小窓から見えると同時に、くっきりと陽性を示すサインが。
もちろん裸眼で充分確認出来るのですが、眼鏡なんかひっぱり出して来て、その後、説明書片手に、
100回くらいは確認し直したのであります。

なんの準備もない想定外の出来事だった為、えーえー、そこからですねー。
『えい、産んでやる!』と決意するまでは、動物園のシロクマ並みに、
ウロウロと、悩みの小部屋を行ったり来たりするわたしでした。